「おーーーい虫たち、ちょっと出てきておくれ」
『へーーーい、何でげしょう、旦那さん』
「おっ、手ぬぐいなんて巻いて、どうしたんだい?」
『外出自粛で暇なんで、この際皆でマンションの大掃除をしようと言うことになったんで』
・・・・・マンションに・・・住んでるんだ
『で、何事ですかい?』
「ちょいとまたお前たちの意見を聞きたいと思ってな」
『さいですかぁ、でも前みたいな≪芸術≫がどうのこうのってやつは御免ですぜ』 『そうそう、芸術芸術ちんぷんかんぷんの無理の助』
「ははは、今日呼んだのは食べ物の話だ」
『食べ物、それなら大丈夫でさぁ、何なりと聞いてくんなさい』
「ちょいと、これを見ておくれ」
『おっ、菓子の箱ですね』 『何だかうまそうな写真が』 『えーーと、≪ふんわりケーキ ティラミス≫ ですかい』 『中のクリームもとろけてたっぷりで』 『うまそううまそう』
「お前たちも、そう思うだろう」 「で、これがそのティラミス」
『おやっ? 思ったより小さいんですねぇ』
「ちょいと、割ってごらん」
『あれっ? あのう・・・そのとろけるクリームってやつはどこに?』
「その下の方にへばりついたやつ、それだよ」
『げげげ、これですかい、小指の爪ほどの・・・』 『だんなぁ、これはちょいとひどいねぇ』
『それで、旦那さん、機嫌が悪い顔してたんだね』 『うん、怒ってた怒ってた』
『でもまあ、これは旦那の負けですねぇ』
「どうして私の負けなんだい?」
『ちょいと箱のここを見てくださいな』 「ほれ、ここにちゃんとこう書いてありやすぜ』
〈写真 イラストはイメージです〉
『ねっ』 『そうそう、イメージイメージのやせ薬、毛生え薬にプロテイン!』
・・・・そうかぁ・・・信じた私がばかだった・・・・
『それじゃあ、旦那さん、元気出してくださいよ、うちらマンションの掃除に戻りやすんで』