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岡本流生清内路通信

自画自解 18 ピエロ

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自画自解 18 ピエロ


18.ピエロ  シリーズ「ピエロ」より  1980年 

CWAJ現代版画展25回記念展に於いて、開会式にご臨席された美智子妃殿下(当時)にCWAJより献上された作品。

ここでCWAJ現代版画展について説明しておきます。 私の理解に間違いが無ければ、戦後、日本の女子学生の海外留学を支援しようと、アメリカ人の婦人が中心となり、ボランティア団体としてCWAJは設立されました。

そして、資金を得るための活動として始まったのが版画の展覧会でした。 その売り上げで女子学生の留学を支援すると同時に、版画家をも支えることになったのでした。

CWAJ現代版画展は今では日本を代表する展覧会の一つに数えられます。 版画協会、板画院、或いは日展や春陽会、国画会と言った団体の垣根を越え、若手や大家と言った枠にも囚われない作品本位の選考にその特徴があります。 

アメリカンクラブの大広間で開かれる開会式には、女性の皇族がたがご臨席されたり、各界の著名なかたがたが集まるなど、とても華やかなものです。 三十代になったかならないかの時、初めてこのオープニングに招かれた時には、「これで自分もやっと一人前の版画家になれたのかな」と思えたものでした。

 また、カタログが素晴らしく、どの展覧会でも白黒が一般的な時代、CWAJのカタログはオールカラーで作品もゆったりと配置され、さらに作家の顔写真と共に、プロフィールも日本語と英語で表記されていました。 毎年丁度私の誕生日(10月3日)前後にこのカタログが送られてくるのですが、それは私にとっては何より嬉しいプレゼントに思えたものでした。

私は、CWAJによって版画家になれたのだと、そう思っています。

この日、私と妻が別室に控えていると、お付の方々を従えて美智子様が入って来られました。美智子様は既にカタログを見られていたのか、展示された私の別の作品「内気なピエロ」について、「どうしてこのピエロは手紙を持っているのですか」と優しい笑顔でお尋ねになられたのでした。

思い出話はここまでにして、今回展示した作品について述べます。技法的には木版、シルクスクリーン、合羽版の混合技法。 バックの表現に独自な工夫があります。

またこの作品には、サインと共に、息子へのプレゼントである旨が書かれています。美智子様に献上されたこともあり、限定枚数を全て売り切り絶版となった後、私の手元に残った作家保存用の10枚ほどに、妻と息子達のために記念として残す意味で書き込みました。

余談ですが、その後どうしてもお金がいることがあり、妻と、私自身に残した分は手放してしまったのでした。
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