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岡本流生清内路通信

打ちのめされて

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打ちのめされて

・・・・一点制作するには、小さなものでも一か月、やや大きくなれば二か月、三か月の作業日数を要する。寸分の狂いさえ生じさせないために息をひそめ、精神も肉体も徹底的に集中させる仕事は、孤独な持続力、ひたすらな根気が必要である。・・・息をひそめて彫る作業は川の流れのように涯しなく、ある時は小さな木喰虫が樹木を喰らっている様にも似ている。

・・・・この気の遠くなるような作業がぼくを捉えて離さない理由とは一体何であろうか。それは、まずこの作業で自分が孤独な時間を得られるということ、そしてこの時間が与えてくれる夢想の喜びである。

この、≪ひわさん≫こと日和崎尊夫、私が愛してやまない版画家の言葉には大いに共感できます。


1980年代の中ごろだったか、土佐の、太平洋を見下ろす崖の上に立つ小さなアトリエ「白椿壮」を始めて訪れた時のことを昨日のことのように思い出します。

遠来の私たち(私と妻)をもてなすために、玄関横の水場で一塊の馬肉を刺身に切り分けていたひわさん。例の、はにかんだ様な笑顔と人恋しさを湛える瞳・・・


美麻の比登志さんのところで「処分するから、欲しいのがあれば持って行って」と言われた蔵書。持ち帰った十数冊の中の一冊が・・・闇を刻む詩人・・日和崎尊夫 木口木版画の世界でした。

ひわさんの全作品が載る、カタログ・レゾネ。ページをめくるたびに、その圧倒的な才能に、打ちのめされます。まさにミューズに愛された人のみが放つ輝き。

その愛と引き換えにミューズが求めた代償が≪命≫だったのか。50年の生涯でした。


もう一人、このレゾネに追悼の文章を寄せる柄澤斎、ひわさんの弟子ですが、彼の文章にも打ちのめされました。多分に、詩的、比喩的でありながら、正しくひわさんの魂を描写する彼の才能と、ひわさんに寄せる深い愛情には、読んでいて嫉妬さえ感じたのでした。


ひわさんの作品を見ていて感じた「宇宙」については、また機会を改めて書きたいと思います。

明日は、一八さんが安曇野のお仲間三人を引き連れて我が家に。またまた飲み会です。


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