朝から雪。空も暗く風もあり寒々とした風景を見ながら、仕事を始めました。こんな天気のせいか≪虫≫たちもおとなしく、心静かに版に向かいました。
昼寝から起きると、青空に白い雲がぽっかり浮かんで、ゆっくりと東へと流れて。それを見てまたぞろ耳元で虫たちの賑やかな声が。
「旦那さん、今日も頑張りますねえ」 「木屑もうんとたくさん出来たじゃないですかい」 「うん、きれいな木屑だ、たいしたもんだ」
『ちょっと待ったぁ、お前たち、私の仕事は木屑を作ることだと勘違いしてないか?』
「えっ、違うんですかい」
『私はアーチストなの、わかる?』 『この世界に一つでも新しい美を作り出したい、後世一人でも共感者があるような作品を残したいものだと日々思い悩んで仕事をしているわけで』
「旦那さん、そんな難しい話は無理ですよ、うちら虫ですもん」 「うんそう、むりむり、わてら小学校しか出てないんだから」 ・・・・小学校・・・・出てるんだ?!
「それより、今朝の南信州読みましたかい」 「いい記事があったでしょう」
『忙しくて、まだ小説しか読んでないけど、何か出てた?』
「11面の、阿智村の記事」 「うん、11面」 「昼神温泉に泊まる客全員に村が5000円補助するんだと」 「そうそう、中に一人でも村民がいればいいんだと書いてありましたぜ」
2に続く