窓辺の仕事机で版木に見当を打っているとき、目の前を白い影が横切りました。目を上げると隣家の屋根に小鳥が舞い降りています。よく見ると山雀のようです。その動きを見るともなく見ていた時、突然昔のことを思い出しました。
昭和の三十年代だったと思います。それが北海道でのことだったのか、それとも東京でのことだったのかはよく覚えていないのですが、山雀を初めて見た時?の記憶。
何かの縁日の人だかりの中心にその鳥がいました。鳥籠から少し離れたところに置かれたミニチュアの神社までお神籤を取りに行く芸を見せていました。 その間、硬貨を咥え、鳥居をくぐり。賽銭箱にお金を入れ、紐を引いて神前の鈴を鳴らし神社の扉を開くのです。
あまりの賢さに驚かされ、何度もその様子を見詰めたものでした。もう一度見たいと思うのですが、もうどこの縁日にも芸をする山雀の姿はありません。 野鳥を保護する法律でそれはできなくなったんだろうか。
おみくじと言えばもう一つ思い出が。これは以前BBSにも書いたことがあるのですが、あまりにも不思議に思えるのでもう一度紹介させてもらいます。
結婚してまだ間もないころ、千葉の兄夫婦の家で妻と年末年始を過ごした時のことです。除夜の鐘を聴いた後、近所の神社まで皆で初詣に出かけました。そこで私が引いたおみくじに書かれていたのが
「・・・木、刃物、紙に関わる職業に就いて吉・・・・」
すでに木版画家として身を立てる決意をしていた私は、大いに勇気づけられ、そしてその予言と我が身の思いとの不思議な重なりに驚いたものでした。
十年ほど後、再びその神社を訪ねお神籤を求めました。しかしそれは何処にでもあるありきたりのもので、以前の物のように具体的に詳しく未来のっ予言を書いてはいないものでした。
ときどき「あれは本当の出来事だったんだろうか」 「夢ではなかったのか」と思うこともあります。さらに今は、「そのお神籤には恋愛運や結婚運についてはどう書いてあったんだろう」と知りたくもなります。その辺のことは全くおぼえていないので。もしかしたら今の私の境遇を言い当てていたんじゃないかなと。