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岡本流生清内路通信

清宮質文の詩情

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清宮質文の詩情

今日は一日中冷たい雨が降り続けました。お陰で余計な気が散らず、仕事に集中できた一日でした。

いま取り組んでいる「父子抒情」のシリーズ4点は全体的に暗い絵です。しかし、元々は父の短歌に付けた版画ですから、≪詩情≫溢れる作品になっています。ベースにした白黒の版画は二十代の初めの作品。その年代の時に、私が強く感じていた故郷北海道への純粋なノスタルジーもあります。 好きなシリーズになるでしょう。

4点の内3点が雪の夜の情景。 雪降りしきる夜の知利別の社宅、工場の夜勤を終え雪道を歩いて帰る人の群れ、雪の原野に切り開かれた真っすぐな道を、遠く明かりの灯る社宅街へと走るボンネットバス。どれも窓の明かり、バスのライト、街灯などが、寒々とした風景の中で≪温かさ≫を感じさせてくれます。

夜汽車で旅をした昔、遠くに灯る家の明かりが、現れては過ぎてゆくのを見るのが好きでした。「ああ、あの明かりの中に幸せな家族が居るんだ」などとかんがえながら。 不思議と夜の明かりがともる家には、幸福感が満ちていて、争いや不幸とは無縁な世界に見えるのです。

同じことを、トルコの荒野を、妻と夜にバスで移動していたときにも感じたなぁ。

4点の最後の一枚は、鮭の片身をさげ、黄昏時の街を行く父の姿。この作品でも、灯る明かりが大切な役割を果たしますね。 このシリーズは、完全な創作版画。 タッチで彫りながら進める仕事は楽しいものです。


≪詩情≫溢れる木版画と言えば、やはり一番好きなのは、清宮直文(せいみやなおぶみ) 他にも同質の詩情を描く版画家が何人かいるのですが、透明な詩情とも言うべき質感、青春の言葉にできぬ痛みと不安、深海魚の孤独な哀しみのようなものは、彼だけの作品世界だと思うのです。

来年は、その多版多色の≪詩情≫をテーマに、制作したいな。 細かく繊細なニュアンスは、言葉で摺師に伝えられそうにありません。それを摺りだすには、全て自摺りで、試行錯誤していくしかなさそうです。 ちょうど「摺りたい!」と言う気持ちが、もくもくしてきたこの時を逃さずに。

ただ・・・・自摺りとなると・・・10枚摺り始めたら…10種類の色違いが出来るんだろうなぁ。どうしても、途中で色を変えたくなったり、他の色ならどんなかなと試したくなってしまうだろうから。これまでがそうだったし、その事が、自摺りをやめる理由の一つでもあったから・・・

でも、今回はそれでもいいのです。売るためなら、同じに刷れたものが何枚も必要だけど、今度の仕事は売る気はないし、自分のための≪一枚≫が欲しいのだから。



明日は、創造館。惠子さんの主催する水彩画のグループ展を見に。上田さんも御一緒。そう言えば、明日は飯田の市長選の投票日。 5選を目指す現職対新人二人。 うーーーん、変わりそうな気がするなぁ。




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