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岡本流生清内路通信

自画自解 15  切り口赤き・・・

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自画自解 15  切り口赤き・・・

15.切口赤き鮭の・・・・・ シリーズ「父子抒情」より 

      切り口赤き鮭の片身をもちて行く街は海底のごとき黄昏


 父、嘉一郎は短歌を詠むひとでした。東京帝国大学在学中に短歌を作り始め、戦地にあっても歌を詠み続けました。戦後は室蘭の製鉄所に勤務しながら、職場の短歌誌「社宅街」を主宰したりもしました。

昭和三十年代、それも早い頃の話です。父は当時歌壇の登竜門と言われた「短歌研究」(角川出版)の50首詠に応募し、第二席に選ばれました。 この50首詠では、中城ふみ子(乳房喪失)や寺山修二(チェホフ祭)が第一席を取り、華々しいデビューを飾っていた時代のことでした。

その父は、しかし、転勤で東京に移った頃から次第に歌を詠まなくなり、やがて全く止めてしまいました。その理由を話すこと無く父も亡くなりました。

この「父子抒情」のシリーズは、父の室蘭時代の短歌の中から特に私の好きなものを選び、版画11点を添えて1974年に文芸同人誌「在」に発表したものです。

この歌以外の私の大好きな歌も載せて置きます。

    穴にひそむ獣らのごとあひよりて眠らんよしんしんと雪はふるなり

    はぐくまれきて露地にのこすはなんの夢夕暮子等唄う“青い山脈”

    こほりたるわが頬を掌もてあたたむる妻の仕ぐさよ日日あたらしき

    冬眠の姿勢もおのずから身につけばさびしき心寄せあいて生く
  
    夜の雪踏めばさやかにきしむ音明日もまた清潔に生きてゆくべし



    
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