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岡本流生清内路通信

自画自解 32 イスラムの町にて

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自画自解 32 イスラムの町にて

32.イスラムの町にて シリーズ「アジアの子供たち」より ブルネイ王国 1991年 18版

まずはアメリカンクラブでの展示の際に作品に付けた説明文から。


          イスラムの町にて  ブルネイ王国


ブルネイは人口30万人にも満たない小さなイスラムの王国です。でも石油や天然ガスのおかげで王様は世界有数のお金持ち、病院や学校も無料だそうです。

人々は水上に高床式の家を建てて暮らしています。学校へもモスクへも船で行きます。

熱帯の国なので人々は仕事が終わると家族でデパートに涼みに来ます。二、三時間クーラーのきいた店内で過ごし、日も暮れ外も涼しくなる頃、家へ帰ります。

この姉妹もそんな店内で見かけてモデルになってもらいました



バブルの時代の話です。 取引画廊の美人主人から、「ブルネイで個展をやらないか」との話が舞い込んできました。聞くと、「ブルネイは石油の収入で国民は皆豊かな生活をしている。お金持ちも多い」とのこと。 話は続き、「現地に進出している日本のデパートで、ブルネイ初の美術品展示即売会をやれば絶対売れる」とも。

展示する作品は日本画、洋画、版画で、展覧会場の一角を私の個展コーナーにするから、そこで実演もやって欲しいと言うのでした。

ブルネイと言う未知の国で展覧会をすると言うだけでも面白そうな話なのに、更に、私と妻の二人分の旅費も滞在費も全て画廊持ちという好条件。(それだけ、その時代は画廊も景気が良かったのです) その場でお話を受けたのでした。 

でも、その後がたいへんでした。 展示予定の作品写真を、駐日ブルネイ王国大使館に前もって提出、審査を受け、展示の許可を得なければならなかったのです。結果は私の作品の場合、女性を描いた作品は全て展示不可の裁定。 前もって船便で送ってある額縁を無駄にしないためにも、同サイズの別の版画(漢字シリーズ)を急ぎ作ったりもしました。

さて、その“ブルネイ初の絵画展示即売会” 幕を開けてみると、会場は連日大入りの盛況。私の実演にも人が押し寄せました。 日本では経験した事がないような、ある種のお祭り騒ぎだったのですが・・・・

いざ終わってみると、一週間の会期中に売れた作品は・・・・ゼロ! (私のも他のも) 物珍しさと、涼を求めて、人が集まってきていただけなのでした。(正確に言えば、売って欲しいと言われた“物”はありました。私が摺りの実演のために持参した絵の具のセットと、額を吊り下げていた金具!)

美人画廊主に同情したのか、会期の終了後に、デパートの店長以下、役員の方が何点か作品を買ってくださり、収支は何とかとんとんぐらいにはなったのでした。

散々な結果に終わった“ブルネイ展”ではありましたが、救いもありました。自由時間の散策、珍しい食べ物、そして、この絵の姉妹との出会い。 この作品のふたり、版画に仕上がってから気がついたのですが、私の息子達の幼い頃によく似ているのです。

また、この時の実演で摺って見せたのが、今回展示してある「美麻にて」です。 もうひとつ、この時は、ブルネイの日本大使館を表敬訪問。大使に自作の版画「ジャーマンアイリス」を贈呈いたしました。この作品、まだ大使館にあるんだろうか。
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