34.South Wind シリーズ「風景」より 金沢八景沖 1987年 13版51度摺り
四十代の一時期、神奈川県展の運営に関わり、版画部門の実行委員長や審査員、審査委員長などを務めました。 丁度その頃、横浜市が開港だったか市制だったかの節目の年を迎えることになり、「市民グラフ横浜」(市の広報誌)が記念の企画をたてました。
横浜市内の名所を絵と文で紹介するというその企画に、私も他の日本画家や洋画家に混じり、版画で参加することになりました。 その時掲載された作品がこの「South Wind」 です。横須賀の我家からは少し離れていたのですが、バイクでよく走った海岸の風景です。
作品の技法が他の作品とは少し違っていて、墨版(図柄の輪郭線の版)が無いのが特徴。私の作品では珍しいもので、輪郭線がない分絵の印象は柔らかくなっています。また、“あてなしぼかし”が多く用いられてもいます。 風を受ける帆に書かれている文字や数字にも、例によって隠された遊びがあります。