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岡本流生清内路通信

往復書簡 Ⅴ

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往復書簡 Ⅴ

吉川さんがこれだけ集中して制作に打ち込んでいる理由の一つは≪残された時間は短い≫ ≪それに比べてこれだけは表現しておかねばならないものが多すぎる≫ たぶんこの思いからでしょう。≪始めるのが遅すぎた≫という気持ちを以前彼から聞いてもいます。

始めた年齢は確かに人よりは遅いでしょう。でも≪どうしてもやっておかねば≫と言う思いが有る限り作品は自ずと生まれてくると信じます。


対して能天気な≪今日の私の独り言≫は。

清書を終えた「はちすわらし」を眺めながら・・・・「こいつ、かわいいなぁ」 「おまえ、ほんとうに生まれてきたかったんだね」・・・・ ははは・・・こんなんです。(吉川さんと比べて自分の幼さがほんと、恥ずかしい)


話を前回触れた「お金と芸術」に戻します。こんな経験をしました。 30代のころ、まだバブルの時代に。 (以前どこかで書いた話ですが)

当時私が取引をしていた画商は多く、定期的に画廊を回っては作品を卸していた時代のことです。 ある画廊の主人からこう持ち掛けられました。

「これと似たような作品、作ってみない」 「あなたの技術ならできるでしょう」 「版木も見せるから」 「それに出来た作品はうちが独占的に買取るから」 見せられた作品は私が尊敬し大好きな、人気作家の木版画。その年に亡くなられた有名な版画家のものでした。

版木は見せていただきました。 でもその≪似たような作品≫を作ることはお断りしました。その先生の作品は、試行錯誤を繰り返し、独自に開発した技法で作られ、余人が考え付かない個性と美しさが特に海外のコレクターを魅了していたのです。


話はまだ終わりません、それから数年して、市場に≪よく似た作品≫が出回り始めました。  海外のコレクターたちも買い求めるようになりました。 扱いは先の話の画商。 ≪誰かを見つけたな≫と私は思い、強い怒りを覚えたのでした。今でもネットでよく見かけます。 売れてもいます。

魂を売るような行為、他人の築いたものを盗むような行いに、私は今でも怒っています。

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